もうすぐ

秋がきたね、と友達が食堂のカレーを頬張っていった。そうだねえ!秋服買った?コスメも秋仕様にしないとな!周りの友達たちはくちぐちに言い、私はそれを聴きながらカレーを一口食べる。スパイスの効いた香、じんわりと後から追いかけてくるは舌への痺れだ。

秋が好きだ。なぜなら冬の序章だから。私は冬がこのうえなく、好き。冬のあらゆる側面が好きなのである。朝起きて結露が浮き出ている窓を開ける瞬間。張り詰めた空気が胸を刺し、痛みさえ感じる。起きたくないとしがみついた布団のあたたかさ。まなじりを閉じて、ゆっくりと息を吸う。暖房の切れた部屋でひとり、ぬるい冷たさを吸い込むとき。学校に行く道すがら、ぐるっと結んだマフラー。水道の水で顔を洗うとき。雨がつめたく、身体を芯から冷やしていく。そういう、一瞬一瞬が寒さでひりつく。痛みを感じるということは生きているということで、吸い込んだ空気は私の身体を内側から純朴な色に変える。純朴な白。まじりけのない冷たさ。

冬が来るのが楽しみで、最近は自宅の廊下で本を読んだり勉強したりラジオを聴いたりしている。廊下というのは変なところで、私は昔から大好きだ。部屋でもなんでもない、あいまいな、それでいて確固たる場所。そんな廊下を踏みしめて歩けば、足の裏がひやっとした。さすが、早くも冬の輪郭をにおわせて、秋が終わるのを待っている。