冬のひ

校庭がうるさい。その喧騒に乗じて、教室内のざわめきも大きくなる。ふっと視線を下せば先輩のクラスで、その色の抜けてきた金髪がちらついた。きゃあきゃあ色めき立つ女子たちに、ほんとうのことを言ってやりたい。こいつは昨日、焼却炉でおまえらのチョコレートを焼き捨ててたんだよ。あんたらが頑張って湯煎してこねて溶かして固めて色付けしたそれを、いとも簡単に壊してしまえるんだよ。どろどろしたチョコレートが炉の中で溶ける。爆ぜる火花が彼の横顔を照らしている。明日の朝には跡形もないだろう。せいぜいやんやりと甘ったるい香りがこびりついてるかもな。そう言い放ち笑うのを見ていた。

溶け出したチョコレートは、ひだみたいになってゴミを伝って流れていく。そうやって、涙を流しても、彼は笑いながらばかにするんだろう。じっと火を見つめていた彼の視線が、私のほうを向いた。なに?と聞いたら、軽く口角をあげて、おまえからは何もないの?と言われた。何もないに決まってんじゃん。えーそうなん?期待してたんだけど。嘘いうな。

燃やされるくらいなら、捨てられるくらいなら、初めから捨ててしまったほうがいい。そのほうがコスパがいい。無駄がない。悲しまない。

焼却炉の火がぼわっと浮かんだ。その赤に照らされて、舞う雪も火の粉のようにオレンジに灯った。